第八夜 天輪儀
「わたし,王様になんてなれやしないわ.」
「王様になるのは,けして難しいことではありません.
ですが,貴方にしか出来ないことなのです.
四葉さまは四葉さまのままでいてください.
我らとしてはただ,
貴方がこの鼠の宝をお持ちになればそれでよいのです.」
そう言って,王は闇色のビードロを投げました.
「これは天輪儀.裏表ある星影の,裏面だけを張り合わせた手鞠です.」
天輪儀のつるつるとした表面は闇を映し出して,
日や月が描く輪をさかさまに,光のない輪を幾重にも放ちます.
輪がぐるぐると回るのを見ていると,一度だけ天輪儀の中が透き通って,
いつもの夜空の星影が,そこに瞬いているような気がしました.
「なにぶん地の底なので垢抜けないものですが,
きっと貴方の旅のお役に立ちます.
さあ,これを持ってお帰りください.」
(Zaurus MI-E21 + PrismPocket, 2003/5/6)
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